「法躰装束抄」「法中装束抄」など装束書の記述から、法衣と袈裟の構成を比較してみました。
文献は室町時代の物ですが、今回は平安~鎌倉初期の僧官装束を想定しています。
古典文学の中で、『衣』『袈裟』と出てくるけど、具体的には一体どんなものを着ていたんだろう?
(例えば、芥川龍之介「鼻」の内供が着ていた『椎鈍の法衣』って? だとか)
絵巻で←こういうお坊様が着ているものはなんていう装束だろう?
この人はどのくらいの位で、寺院内の序列は……?
…というような疑問の手がかりにするために、ちまちま書き出していたものですが、大河の信西さん達の謎衣(※前回記事参照)のせいでフンガーフンガー云わされ、こりゃ一覧表にでもしないとあたいのおつむじゃあ無理だよ!と思ったので、まとめてみました。
禅宗が入ってきてからのものと思しき『直綴』などは入れていません。直綴の木訥とした襞が三度の飯より好きだ!という方には申し訳ございません…。
(図)五条、七条、九条、二十五条袈裟、修多羅、横皮。
修多羅がんばった(つぶれた)
【2014/03/01追記】比較表のPDF版を作成しました。
『法中・法体装束抄』による 平安~中世世密教系法衣袈裟構成比較表(pdf)
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文献は室町時代の物ですが、今回は平安~鎌倉初期の僧官装束を想定しています。
古典文学の中で、『衣』『袈裟』と出てくるけど、具体的には一体どんなものを着ていたんだろう?
(例えば、芥川龍之介「鼻」の内供が着ていた『椎鈍の法衣』って? だとか)
絵巻で←こういうお坊様が着ているものはなんていう装束だろう?
この人はどのくらいの位で、寺院内の序列は……?
…というような疑問の手がかりにするために、ちまちま書き出していたものですが、大河の信西さん達の謎衣(※前回記事参照)のせいでフンガーフンガー云わされ、こりゃ一覧表にでもしないとあたいのおつむじゃあ無理だよ!と思ったので、まとめてみました。
禅宗が入ってきてからのものと思しき『直綴』などは入れていません。直綴の木訥とした襞が三度の飯より好きだ!という方には申し訳ございません…。
(図)五条、七条、九条、二十五条袈裟、修多羅、横皮。
修多羅がんばった(つぶれた)
※袈裟の名所は、京都国立博物館2010年特別展覧会「高僧と袈裟」リーフレットを参考にした。
袈裟」は三衣(さんね)といって大きく三つに分けられます。
いくつか言い方がありますが、
大衣(九条以上の袈裟、僧伽梨)
上衣(七条袈裟、鬱多羅僧)
下衣(五条袈裟、安陀会)です。
その昔インドで僧侶が袈裟以外の衣を着けなかった頃には、大衣は上着や寝るときの掛布団代わり、上衣は衣、すこし小さめの仕立ての下衣は下着(腰巻き)でした。
袈裟について。
袈裟」は三衣(さんね)といって大きく三つに分けられます。
いくつか言い方がありますが、
大衣(九条以上の袈裟、僧伽梨)
上衣(七条袈裟、鬱多羅僧)
下衣(五条袈裟、安陀会)です。
その昔インドで僧侶が袈裟以外の衣を着けなかった頃には、大衣は上着や寝るときの掛布団代わり、上衣は衣、すこし小さめの仕立ての下衣は下着(腰巻き)でした。
法衣 | 着用者 | 色 | 調 | 袈裟 | 下具 | |
法服(袍裳) | 法皇、法親王 晴儀料 |
赤 小葵文、浮織・堅織、裏有。夏は薄物。 打裳同色。 | 有文(轡唐草、蓮花菱襷など様々)綾織物、平絹 袷(=裏地付) 打裳、別仕立て、単(=裏地無し)、 方立(僧綱襟を立てる) 縫腋 |
衲・甲・平等、七条・九条の袈裟、横被 | 表袴、大口、襪、鼻廣沓、念珠、檜扇、帽子 修多羅 |
|
法親王 料か | 紫 | |||||
僧正 | 香 | |||||
上下通用 | 墨 | |||||
受戒儀 等 |
薄墨(衣袍裳とも。表袴も薄墨) | |||||
鈍色 | 僧正 | 香(別名、香鈍色・星月夜) | 無文 単 生絹・精好・穀織 方立 裳別(単、白或は黒) 縫腋 |
五条袈裟 (平袈裟も) |
表袴、大口、襪、鼻廣沓、念珠、檜扇。 また、下臈は多く指貫。指貫の料は、白下袴、指貫、冬は衵、夏は単大帷子 |
|
凡僧以上僧正まで上下通用 | 白が本義。後代は正色も使用。浄衣の別称も | |||||
薄墨色のものを椎鈍というか | ||||||
裘代 | 法皇、法親王の宿装束 | 有文 袷 縮羅(しじら)織、熨斗目綾、平絹等、 俗体直衣の調に同じ 方立 入襴(裳付)で長く裾を引く 闕腋 |
五条袈裟 |
指貫、大口、大帷子、衵、
檜扇(夏は蝙蝠)、念珠(刺高) |
||
素絹 | 法会、参内時など | 白を本義とする | 無文 単 生絹 方立無 入襴引裾 闕腋 裘代とほぼ同型 (長素絹とも) |
指貫 単 帷子、数珠、檜扇 | ||
半素絹 | 上下、無位 通用 常の衣 |
無文 単 生絹、麻など 方立無 入襴 闕腋 素絹を丈短に仕立てる(切素絹とも) | 五条袈裟 内々では省略 |
指貫 単 帷子 | ||
裳付衣 | 墨 墨染衣、空衣(うつほ)とも | 無文 単 生絹、麻など 方立無 入襴 闕腋 | ||||
付衣 | 凡僧 以上か |
香薄物、白薄物、薄墨 着用例;菊文(法皇・法親王)牡丹文(摂家)桐文(足利義満) | 有文或は無文 薄物、長絹、布(麻、葛等の織物) 裳付衣に僧綱襟を立てたもの | 五条袈裟 | 表袴、大口、襪、鼻廣沓、念珠、檜扇。 略儀には襟を半分に折る、袴を指狩に変える等する |
袈裟について。
袈裟 | 法衣 | 着用者 | 調 | 横被(皮) | 条数 | |
衲 袈裟 |
法服 (袍裳) |
晴儀、大僧正 以下凡僧まで |
綾織物、或は紺地錦 | 縁と 甲は 別布 、袷 |
唐錦、織物 縫物等、様々 |
九・七条
|
甲 袈裟 |
僧正 | 『香甲』縁濃香、甲(田相部分)香 綾、有文 | 仕立様 袈裟に同じ |
七 条 |
||
僧綱 | 『紫甲』縁黒、甲紫 綾、有文 | |||||
凡僧(有職、非職) | 『青甲』縁黒、甲青 綾、有文 | |||||
已講 | 『櫨甲』縁黒、甲櫨 有文 | |||||
威儀師・従威儀師 | 『赤甲』縁黒、甲赤 有文 | |||||
平 袈裟 |
法服 (鈍色にも) |
僧正以上 | 香 浮堅織、有文 | 縁甲 共布 、袷 |
||
清華家入道以下 | 白 浮堅織、有文 | |||||
上下通用 | 白 生平絹 | |||||
法服の時 | 布 | |||||
五条 袈裟 |
鈍色、 裘代、 素絹等 |
法皇・法親王・ 摂家入道 |
香 練浮織物、堅織物 | 単 | - | 五 条 |
凡人僧正、聴りて 大納言入道の料 |
香 精好織 | |||||
貴人入道 | 紫 浮織物に白貫文 | |||||
上下通用 | 白 薄物、精好 | |||||
薄墨 有文薄物、織物、 綾、平絹等 裏付も |
※主に、『法中装束抄』『法体装束抄』(所収『新校群書類従 第六巻装束部(二)』内外株式式会社)に拠り、
適宜「原色日本服飾史」(井筒雅風/光琳社出版)「有職故実大辞典」(鈴木敬三編/吉川弘文館)を参照した。
※法衣構成に於いて、『布袴』『直綴』については省略した。
※法衣構成に於いて、『布袴』『直綴』については省略した。
【2014/03/01追記】比較表のPDF版を作成しました。
『法中・法体装束抄』による 平安~中世世密教系法衣袈裟構成比較表(pdf)
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