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深度三,三三糎の心の海から湧き出ずる、逆名(サカナ)のぼやき。
 
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「法躰装束抄」「法中装束抄」など装束書の記述から、法衣と袈裟の構成を比較してみました。
文献は室町時代の物ですが、今回は平安~鎌倉初期の僧官装束を想定しています。

芦引絵の坊さん古典文学の中で、『衣』『袈裟』と出てくるけど、具体的には一体どんなものを着ていたんだろう?
(例えば、芥川龍之介「鼻」の内供が着ていた『椎鈍の法衣』って? だとか)
絵巻で←こういうお坊様が着ているものはなんていう装束だろう?
この人はどのくらいの位で、寺院内の序列は……?

…というような疑問の手がかりにするために、ちまちま書き出していたものですが、大河の信西さん達の謎衣(※前回記事参照)のせいでフンガーフンガー云わされ、こりゃ一覧表にでもしないとあたいのおつむじゃあ無理だよ!と思ったので、まとめてみました。
 禅宗が入ってきてからのものと思しき『直綴』などは入れていません。直綴の木訥とした襞が三度の飯より好きだ!という方には申し訳ございません…。

(図)五条、七条、九条、二十五条袈裟、修多羅、横皮。
修多羅がんばった(つぶれた)
袈裟図解
※袈裟の名所は、京都国立博物館2010年特別展覧会「高僧と袈裟」リーフレットを参考にした。

袈裟」は三衣(さんね)といって大きく三つに分けられます。
いくつか言い方がありますが、
大衣(九条以上の袈裟、僧伽梨)
上衣(七条袈裟、鬱多羅僧)
下衣(五条袈裟、安陀会)です。
その昔インドで僧侶が袈裟以外の衣を着けなかった頃には、大衣は上着や寝るときの掛布団代わり、上衣は衣、すこし小さめの仕立ての下衣は下着(腰巻き)でした。


法衣構成比較表
法衣 着用者 調 袈裟 下具
法服(袍裳) 法皇、法親王
晴儀料
赤 小葵文、浮織・堅織、裏有。夏は薄物。 打裳同色。 有文(轡唐草、蓮花菱襷など様々)綾織物、平絹 
袷(=裏地付)
打裳、別仕立て、単(=裏地無し)、
方立(僧綱襟を立てる)
縫腋
衲・甲・平等、七条・九条の袈裟、横被 表袴、大口、襪、鼻廣沓、念珠、檜扇、帽子
修多羅
法親王 料か
僧正
上下通用
受戒儀
薄墨(衣袍裳とも。表袴も薄墨)
鈍色 僧正 香(別名、香鈍色・星月夜) 無文 単 生絹・精好・穀織 
方立 裳別(単、白或は黒)
縫腋
五条袈裟
(平袈裟も)
表袴、大口、襪、鼻廣沓、念珠、檜扇。 
また、下臈は多く指貫。指貫の料は、白下袴、指貫、冬は衵、夏は単大帷子
凡僧以上僧正まで上下通用 白が本義。後代は正色も使用。浄衣の別称も
薄墨色のものを椎鈍というか
裘代 法皇、法親王の宿装束 有文 袷 縮羅(しじら)織、熨斗目綾、平絹等、
俗体直衣の調に同じ
方立 入襴(裳付)で長く裾を引く 闕腋
五条袈裟
指貫、大口、大帷子、衵、
檜扇(夏は蝙蝠)、念珠(刺高)
 
素絹 法会、参内時など 白を本義とする 無文 単 生絹 方立無 入襴引裾 闕腋 裘代とほぼ同型
(長素絹とも)
指貫 単 帷子、数珠、檜扇
半素絹 上下、無位
通用
常の衣
無文 単 生絹、麻など 方立無 入襴 闕腋 素絹を丈短に仕立てる(切素絹とも) 五条袈裟
内々では省略
指貫 単 帷子
裳付衣 墨 墨染衣、空衣(うつほ)とも 無文 単 生絹、麻など 方立無 入襴 闕腋
付衣 凡僧
以上か
香薄物、白薄物、薄墨 着用例;菊文(法皇・法親王)牡丹文(摂家)桐文(足利義満) 有文或は無文 薄物、長絹、布(麻、葛等の織物) 裳付衣に僧綱襟を立てたもの 五条袈裟 表袴、大口、襪、鼻廣沓、念珠、檜扇。
略儀には襟を半分に折る、袴を指狩に変える等する


袈裟について。
袈裟構成比較表
袈裟 法衣 着用者 調 横被(皮) 条数

袈裟
法服
(袍裳)
晴儀、大僧正
以下凡僧まで
綾織物、或は紺地錦 縁と
甲は
別布
、袷
唐錦、織物
縫物等、様々
・七条

袈裟
僧正 『香甲』縁濃香、甲(田相部分)香 綾、有文 仕立様
袈裟に同じ

僧綱 『紫甲』縁黒、甲紫 綾、有文
凡僧(有職、非職) 『青甲』縁黒、甲青 綾、有文
已講 『櫨甲』縁黒、甲櫨 有文
威儀師・従威儀師 『赤甲』縁黒、甲赤 有文

袈裟
法服
(鈍色にも)
僧正以上 香 浮堅織、有文 縁甲
共布
、袷
清華家入道以下 白 浮堅織、有文
上下通用 白 生平絹
法服の時
五条
袈裟
鈍色、
裘代、
素絹等
法皇・法親王・
摂家入道
香 練浮織物、堅織物
凡人僧正、聴りて
大納言入道の料
香 精好織
貴人入道 紫 浮織物に白貫文
上下通用 白 薄物、精好
薄墨 有文薄物、織物、
綾、平絹等 裏付も
※主に、『法中装束抄』『法体装束抄』(所収『新校群書類従 第六巻装束部(二)』内外株式式会社)に拠り、
適宜「原色日本服飾史」(井筒雅風/光琳社出版)「有職故実大辞典」(鈴木敬三編/吉川弘文館)を参照した。
※法衣構成に於いて、『布袴』『直綴』については省略した。

【2014/03/01追記】比較表のPDF版を作成しました。
『法中・法体装束抄』による 平安~中世世密教系法衣袈裟構成比較表(pdf)

[袈裟・法衣の目次]
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無駄と斑の腐渣。
らくがきと調べ物が趣味の
風俗文化史好き歴史オタク。
人物志より文化史寄り。
イチ推しはみづら
(美豆良/鬟/鬢頬/総角)。

中古日本史、東洋史、仏教史(仏教東漸期の東アジア、平安密教、仏教芸能、美術、門跡寺院制度等)、有職故実、官職制度、風俗諸相、男色史。古典文学、絵巻物、拾遺・説話物。

好きな渡来僧:婆羅門僧正菩提僊那、林邑僧仏哲
好きな法皇:宇多法皇
好きな法親王:紫金臺寺御室、北院御室
好きな平氏:重盛、経盛、敦盛
好きな法衣:裘代五条袈裟
好きな御衣:御引直衣
好きな:挿頭花と老懸を付けた巻纓冠
好きな結髪:貴種童子の下げみずら
好きな童装束:半尻、童水干
好きな幼名:真魚(空海さん)
好きな舞楽:陵王、迦陵頻、胡蝶
好きな琵琶:青山、玄象
好きな:青葉、葉二
好きな仏像:普賢・文殊(童形)はじめ菩薩以下明王、天部、飛天(瓔珞天衣持物好き)

やまとことばも漢語も好き。
活字・漫画・ゲーム等、偏食気味雑食。

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