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深度三,三三糎の心の海から湧き出ずる、逆名(サカナ)のぼやき。
 
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以前、大河「平清盛」 出家姿の清盛のポスター映像が公開されたときに
失笑した
と書いていた金色の法衣ですが、(過去記事)

こんなギチギチの衣装、あくまでポスター撮影用で、まさか普通に劇中で使わないよな?と思ったら
本編で着用するようになりました。

下の重ねを多くしているようですが、面白いことに、公式サイトの人物デザインコメントには
「重ね着を多くして動きにくくして緩慢な動きで清盛の加齢を表現」
みたいなことが…
……いや普通……ご老体にわざわざ動きにくいもの着せないでしょ…
緩慢な動きは俳優が演技で表現すべきでしょうが。
そこまでしてやらなきゃならないほど大根なのか?大リーグ養成ギブスか?
逆転の発想すぎる…。

というか、今までの法衣は下具の構成をサボりすぎているから帯腰があそこまでえぐれてるんでしょう。
表着だけそれらしいもの羽織らせても、装束全体の構成とかどうでもいいのが透けて見える。
タケノコ状の撫で肩についてはやっぱり能装束ぽくしたかったらしいですね。
…はー。
まあ、それがわかったのはよかったけど…。

色味が下品なのはまあ清盛自体がそうっていう仕様らしいのでおいときますが…。

しかし、いざ動いてる所を見てみると、気になるのはギチギチさだけじゃなかった。

これー、なんか公式では「裘代を基本にアレンジ」っていうんですけど
最早どこが「基本」なのか…
d67ac7ae.jpeg

形はむしろ、これまでの清盛の袍裳もどき法衣と同じで、
そこに裾を引く。
これが謎。

裘代の裾は、装束そのものが長く仕立てられているもの。
袍裳の裳は、共布の巻きスカート状になる。

この装束の裾は…
これ何なんだろう、見たことあるような気もするけど…って
ちょっと考えましたが、多分これって、下襲の別裾…。

下襲は、束帯の下具で、あの長い裾はこれについています。
院政期の服飾は色々と華美になっていましたが、下襲も長大になっていて、
ついに、長い裾だけをセパレートにするようになりました。
帯を付けて、女性の裳に似たような形です。これが別裾…。
裏地赤のおめり(表に返して縁取りにする)があるのも、やっぱり下襲の仕立てだし…

あう…
なんかさあ。衣装見てて、このパーツ使えるんじゃね?と思ったんだろうけど
下襲とゆーとろうが。
表着の下から出すモノなのよそれ。

というかいちばん悔しいのが

なんでそんなわざわざ非実在装束にすんの、

ほとんどつくりがかわらないんだから

袍裳の裳にしてくれよおおお!!!!!!

それか袈裟にしろよおおおおおおお!!


その金襴で素敵な袈裟を作ろうよおおお!!!



袖に別布切り替えや随所に赤の縁取りがあります。
すみません。
本当は色とか柄とか入れないと、下品さは伝わらないんでしょうけれど
汚らわしくてこれ以上正視に耐えない…。
構造を見るだけでいっぱいいっぱいでした…。

しかもこれを公式サイトで「裘代」と紹介しちゃってるのが度し難い。

どうでもいいんだよね。本当に。





ちょっと前なのですが、大河のパブリックビューイングが催されて
そこで人物デザイン担当の方の質疑応答コーナーもあったらしいです。
twitterで実況されたもののまとめがあります
【20121028 【大河ドラマ】平清盛パブリックビューイング生中継】(togetter)

これ読むと、もう、ツッコミというかね…。
最初から、「あの、本来はこう…ですよね?」

みたいな感想を言うのは、お門違いだった、ということが解ります。


この人達、最初から「その時代本来の姿」とか、目指していなかった。
何を目指していたのかは解らないけど、
とにかく、そんなことよりも優先されるものがあったらしい。
カッコイイとか新しいとかキャラに合ってるとか。
だから、今回の大河が提示しているものと、
史実、風俗考証、また、『平家物語』や『保元物語』『源平盛衰記』など
下敷きになったものを引き合いに出しての
「本来はさ」という批判は、まったく噛み合わないのです。

要するに私が大河の装束に対してガーガー喚いてたさまが、どれだけ暖簾に腕押しの滑稽劇だったかというね…。

敬語が使えない脚本家に平安時代のえらいひとが出てくるシナリオなんか書かせるのは無理。
源氏政権が専門の中世史学者に考証お願いすれば、平家側から語ろうとするときに話がブレるのはあたりまえ。
特撮ヘアスタイリストに有職故実いじらせるのは意味不明。
日舞の舞踊家に舞楽や神楽の振り付けさせるのは筋違い。
最初から無理がありすぎる。ほとんど絶望的。
それでも、普通は「専門外だから勉強も頑張ってます」ていうのが、
当然、あるだろうと思ってしまうんですが…。
若い人達なんだから意欲も盛んだろうし、とか。
もう、そんな考え自体甘かったんだということです。


公式ガイドブックの、舞楽のとこ。「胡飲酒風」とか、「○○をアレンジ」って、書いてあった。
「役者さんが二、三度で覚えられるように振付家が考える」と。

…どんだけやっつけ仕事なん。
日舞が悪い訳じゃないですよ。白拍子の曲舞とかは日舞の源流ですから。
でも、舞楽はぜんぜん系統が違う。ヒップホップとタンゴくらいに違う。
胡飲酒も、青海波も、現行で舞われてるもの。
雅楽会の方にお願いしてちょっと見て貰うだけでもだめだったのか。
あれだったら動画とかありますけど!?
二三度の練習で覚えて数カットしか使わないものにわざわざ出鱈目な振り付け考えるとか。
滋子の胡飲酒なんか、わざわざニセモノ装束まで作らせて、謎の道路標識みたいなアイテムまで持ってきて。
そっちのが手間じゃないのか?

って思うんですけど、「それっぽいものでなんとかしてくれる」のが、あの現場ではすべてだったみたい。
そういうところを内輪で褒めちぎり合ってる。
サークル活動だよねえ…。


もうなんかね、
熱帯魚専門業者を引っ張ってきて寿司屋やらせてるようなもん

そもそも食べられるものを作れない人達を呼んできている時点で終わってるし
誰も「まっとうな寿司」なんか作ろうとしていない。


本人達は寿司なんか食べたことないし、
「えーナマ魚とか無理。カルパッチョならw」みたいな感じで
でも暖簾は普通に「寿司」ってかけてある。
店自体は昔からあって、「代替わりしたらしいけど、またおいしいの食べたいなー」
と思って、客は入ってくる。
で、まずポップすぎる内装にビクッとして
「でも最近はこういう店もあるし…」と自分に言い聞かせて、とりあえず握ってくださいと言うと

バルサミコ和えのクスクスに乗せられたエンゼルフィッシュの死体

が出てくる。

「え…これ、お寿司…じゃないですよね?」

「え。うち寿司屋とかじゃないんで。創作和風ですしww


それよりどうですそれ斬新でしょ。見たことないでしょ。

自分ゆうべ考えつきました。自信作ですよ」




普通のものが食べたいのに、

上からなんかわからないものを皿に投げつられて自慢される。


寿司を食べたいと思うこと自体、笑われてるみたい。

そういう気分になる


そりゃ、保健所に通報される程のことではないんだろうし、
口に入れてみれば食べられないこともないかも知れませんよ。
意外に乙な味で、やみつきになる人もいるかも知れないし。

けど私は普通に寿司が食べられるものだと思ってた。
暖簾の隅にちーーーーさく「※創作和風(フィクション)です」
って書いてあったのを
「あー読めませんでしたぁ~?w」って笑われても、騙される方が悪いんだね。ごめんね。
「創作」とか和「風」とか以前に、これ、食べられるの?っていうレベルですけど…。

今回の大河が視聴率悪いのって、モノ自体の拙さに加えて

そういう制作サイドの態度が透けるからっていうのもあると思う。





これが自費制作フィルムだったら褒めてあげられると思う。
個々が自分の出来る範囲で頑張りはしてたんだと思う。
いくら頑張っても出来ないものは出来ないよねっていうだけの事だし。
ただ
我の強い人が暴走しがちでモノとしてのまとまりがない。
興味のない所、力の足りない所が、明らかにスカスカになる。
それなのに、なぜか他の専門家の助けを借りようとしない。
意地でも非力な自分たちのフィールドに持ち込んで処理しようとする。
モノの出来映えを顧みず、自分らが知恵絞りましたと激しくアピール。
なんというか…上の世代の技術や知識をそんなに借りたくないのか?っていう、
何に対するレジスタンスなんだ?って首を傾げたくなるような謎の視野狭窄。
まるで日本人が彼らの世代しかいない、文化がすべて断絶した世界で作ってるみたい。

でもまあ、
こういう、自分たちがやりたいものをやる、っていう、二次創作同人ノリ…というと語弊があるが
いわゆるヤマナシオチナシイミナシ(言葉通りの本来的な意味のほうで)で
破綻がない方が奇跡っていう自費制作コスプレ時代劇なら、
制作側が、自腹を切って作って、それでも表現したかったものなら。
そういうものだったら、別にいいんじゃないかなと思えただろう。

でも、違うからさ…。

国営放送が徴収した受信料でお給料貰ってプロとしてやってる仕事として、良心が痛まないのかなあ…。

公共放送を自説開陳とかファッションショーに使うなよ…。



あとtwitterといえば、大河の公式アカウントさん宛てに
何回か「なぜ主要キャラクターは袈裟をつけないのでしょうか?」という質問をさせて頂いていて、私自身にはお返事を頂いたことはないのですが、僧職の方からの「清盛や後白河法皇が袈裟を懸けないのは意図的な演出ですか?」というような御質問へ、

『@nhk_kiyomori: 【いそPです】こちらは「裘代」(きゅうたい)という、当時の高僧が着用していた衣装を使っています。』 

という珍回答。
パブリックビューイングでも質問募集してたので袈裟は?って聞いてみましたがまあ、お答えはないですよね。
あと痛いクレーマーなの承知で、上に挙げた構造推測図つけて
「以前にも「なぜ入道は法衣に袈裟を懸けないのか」というような質問をさせて頂きました。大河公式サイトにて清盛着用装束が「裘代」とされていますが、画面上で拝見してもこれだけの差異が見受けられます。
 裘代は名称が出ること自体少ない装束ですし、誤ったかたちと名前を御記憶になってしまう方もいらっしゃるかと思います。サイト上のキャプションだけでも「金の裘代」から「金の法衣」なり、訂正を御検討頂けないでしょうか。」
というのは送ってみました。
まあ、反応頂けないのは解ってたんですが、ぶつぶつ呟いているだけでも不毛だし、裘代への義理は果たせたかなあと思ったりして…。


なんかね…。もう、ぐったりですよ。
また録画たまっちゃってるんですが、年内に見る気力あるかなあ。
でも来年に持ち越すのもやだし…ふう。


[袈裟・法衣の目次]


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COMMENT
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無題
2012/12/12(Wed)00:36
あ、すいません襟巻きの件はご存じだったんですね。
詳しいと気になっちゃって大変ですね…当方は全然気にならないので普通に見てました。
れんこん 編集
コメント有り難う御座います。
2012/12/12 19:43
はじめまして、れんこん様。
一応、公式サイトの人物デザインの方には目を通しております。それ以外のメディアは追ってませんが。
襟巻きの件は、正直、首元が…という以前に装束として貧弱に見えるのは、袈裟も懸けない改造服だから当然だと思います。そこからどうにかして欲しかったですね。
逆名
 

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管理人紹介
HN:逆名[サカナ]
HP漁屋無縁堂

無駄と斑の腐渣。
らくがきと調べ物が趣味の
風俗文化史好き歴史オタク。
人物志より文化史寄り。
イチ推しはみづら
(美豆良/鬟/鬢頬/総角)。

中古日本史、東洋史、仏教史(仏教東漸期の東アジア、平安密教、仏教芸能、美術、門跡寺院制度等)、有職故実、官職制度、風俗諸相、男色史。古典文学、絵巻物、拾遺・説話物。

好きな渡来僧:婆羅門僧正菩提僊那、林邑僧仏哲
好きな法皇:宇多法皇
好きな法親王:紫金臺寺御室、北院御室
好きな平氏:重盛、経盛、敦盛
好きな法衣:裘代五条袈裟
好きな御衣:御引直衣
好きな:挿頭花と老懸を付けた巻纓冠
好きな結髪:貴種童子の下げみずら
好きな童装束:半尻、童水干
好きな幼名:真魚(空海さん)
好きな舞楽:陵王、迦陵頻、胡蝶
好きな琵琶:青山、玄象
好きな:青葉、葉二
好きな仏像:普賢・文殊(童形)はじめ菩薩以下明王、天部、飛天(瓔珞天衣持物好き)

やまとことばも漢語も好き。
活字・漫画・ゲーム等、偏食気味雑食。

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