NHK時代劇スペシャル「母恋ひの記」
原作:谷崎潤一郎『少将滋幹の母』
番宣をチラッと見て、主演が劇団ひとり、黒木瞳って時点であまり見たいとは思わなかったんですが、暇だったので見てみました。
あらすじ。
平安初期。老齢の大納言国経(大滝秀治)には、五十数歳も年下の妻(北の方…黒木瞳)がいた。夫婦の間には滋幹(成長後は劇団ひとり)という一粒種も生まれ、幸せに暮らしていたが、ある年の正月、突然左大臣である藤原時平(長塚京三)が新年の挨拶にやって来る。実は時平には、噂の美人妻への下心があった。
七十を超えて大納言どまりの国経と、押しも押されもせぬ藤原北家の左大臣時平とでは、同じ貴族でも大きな差がある。年賀の宴に時平を迎えた国経は舞い上がり、時平やその取り巻きの挑発に乗って、命よりも大事な宝であるはずの妻を時平に差し出してしまう。
母と引き裂かれた幼い滋幹は涙に暮れ、以来、母の面影を求め続ける事となる。
成長した滋幹は母に逢う事も適わぬまま、幾度となく文を送り続ける。だが、その文は母君と時平の間に生まれた異父弟・本院中納言敦忠(川久保拓司)の手で破られる。敦忠は、母が己を通して別れた滋幹を愛し続けている事に嫉妬していたのである。宮城で滋幹に母の様子を聞かれても終始冷めた態度の敦忠は、母はもうあなたの知っているような人ではない、容色は衰え、さらに先年疱瘡を患っている(=あばた顔になっている)と告げる。
時は移ろい、母君が五十になった祝いの席に、母から是非にと呼ばれた滋幹だったが、結局、醜くなった母君に会う事が耐えられず、館で懊悩するばかりだった。
やがて滋幹も壮年となる。敦忠も既に亡く、母君は出家して庵を結んでいるという。この期に及んでも滋幹はまだ母に会いに行く事はなかったが、その執着を断ち切る事も出来ずにいた。
死ぬときは何の未練もない清らかな心持ちで逝きたいと願う滋幹は、比叡に籠もり荒行に挑むが…。
てなお話。
実際見てもやっぱり黒木瞳では萌えないや。だってごめん、私、黒木瞳は美人だとは思うんだけど、母性とか理想の女性像とかは感じないから、そういう役柄にはめていこうはめていこうっていう方向性が冷めるんだよ…まあ、好みの問題でしょうが。
でも黒木瞳はちょっとしか出ないし3分の1は御簾の向こうか袖かざし+無言だったので平気でした。
あと劇団ひとり。最初、なんでやねんって思いましたが、ママに似なくて大滝秀治にそっくり、へたれのマザコンさん、おとなしいけどキレると怖い、壮年でも少将どまり、っていう役柄には本当にぴったりでしたよ…。うん、変に二枚目俳優じゃなくて良かった。若干滑舌悪かったけど演技は悪くなかった気がする。
ひとりさんの並っぽい存在感があったればこそ(物凄く褒めています)、異母弟の敦忠さんなど、北家の公達が本当に貴種の人に見えたという…。きらきらしかった!
左大臣時平は菅原道真を左遷し、その怨霊に取り殺された(三十九歳で早逝)…という感じに有名ですが、その子息達も短命で、これも菅公の呪いといわれました。本院中納言敦忠は管弦の名手として知られ、また三十六歌仙にも数えられています。
ちなみに、年賀の宴で時平が歌ったのは催馬楽「我門乎(わがかどを)」でした。うちの門前をうろうろしてる男がいるけど、なんのつもりだろう(目当ての女がいるのだろう)という歌。ここんちの奥さんに下心ありありですよーみたいな歌いかけ…。とさんかうさーん♪
それから、管弦シーンも何度もあって良かったです。
あと九相観(人間の死体が朽ち腐れていく様を見る事で、肉体への執着を断ち切る観法行)の話とか萌えー。鳥辺野で女の腐乱死体眺める大滝秀治ホラー!そりゃお子様もトラウマになりますって!
まあ、ぶっちゃけ装束が平安初期のじゃないだろ…っていうのはあるんですがきっとそれは言わないお約束なんだね。うん、難しいよね。 再放送あるなら資料映像として録画しといてもいいかな。
また単発でこういう王朝ものやってくれたらいいな。でも地味すぎて民放ではきっと無理だろうなあ…。
原作がちゃんとしてるからなんだろうか。とりあえず、敦忠さんに話し掛けてたお兄さんが保忠さんか顕忠さんか気になるので原作読んでみたいです…。
そういえば、演出がなんか濃いいと思ったら黛りんたろうでした…。