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深度三,三三糎の心の海から湧き出ずる、逆名(サカナ)のぼやき。
 
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「雅亮(満佐須計)装束抄」から、みづらの結い方に言及している部分の抄出です。大分前にTwitter向けの外部テキストサービスに置きっぱなしになっていたので、此方でも公開します。

原文がほとんどかなで読みにくいので、
適宜漢字に直したものをまず記し、その後に原文を置いてあります。
()内の振り仮名は底本に基づいたものと、筆者が補ったものがあります。


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満佐須計装束抄(抄出)
(巻二)

童(わらは)殿上のこと

 闕腋(わきあけ)の装束(さうぞく)物具(ものゝぐ)常の如し。袍(うへのきぬ)赤色なり。常の五位の袍の赤みたる様なり。紋に葵(あふひ)常の事なり。下襲(したがさね)常の躑躅(つつじ)、表綾、裏単衣、文榮して打ちたり。中倍(なかへ)あり。半臂(はんぴ)は黒半臂、襴緒(らんを)などは羅といふものなり。
 夏は薄物、常の衵(あこめ)の色心にあるべし。但し濃装束ならば、蘇芳(すはう)の衵青き単衣にて、濃き打衣(うちぎぬ)着るべし。表袴(うへのはかま)織物、上達部(かんだちめ)の装束の体なり。これは濃き装束、裏も濃し。大口(おほぐち)も濃かるべし。取り重ねて圓座(わらうだ)の上に置きて取り出(いだ)すべし。着るべき次第に置くべし。
 帯、角の丸鞆(まろとも)、五位の笏(さく)、引帯、襪(したうづ)、絲鞋(しかい)、扇(あふぎ)を具すべし。淡繪(だみゑ)あり。
 夏の下襲赤色、黒半臂なり。色を聴(ゆ)りたる故なり。表袴の裏、大口赤くとも苦しかるまじけれども、幼ければうち任せては濃装束なり。
 装束する事は常の闕腋(わきあけ)なり。但し半臂の緒結ふべし。本(もと)を見るべし。装束して後、圓座(わらうだ)にこの兒(ちご)を据へて、びんづらを結ふべし。

 揆上(かゝげ)の筥(はこ)の蓋に、挟形(はさがた)二筋(ふたすぢ)、■長さ一尺余(よ)ばかり、細さ五分ばかりに、羅を畳みて、色々の糸にて、鬘手(かづらで)に蝶小鳥(てふことり)を繍(ぬ)ひたり。色半臂の襴のき[れ]か■■紫の糸の太らかにおしよりたるが、■長さ二三尺ばかりなる三筋四筋、櫛二枚がうち、解櫛(ときぐし)一枚、平髪掻(ひらかうがい)一つ、油壺に油綿いれて、■小刀ひとつ、これらを揆上の筥の蓋に入れて、装束に具して取り出すなり。泔坏に水いれて、柳筥(やないばこ)に置きて具すべし。紙捻(かみねり)二筋。


みづらをゆふこと

 まづ解櫛(ときぐし)にて、兒の髪を解きまはして、平(ひら)髪掻(かうがい)にて、分目の筋より項(おなじ)を分け下して、まづ右の髪をかみ[ひ]ねりして結ひて、左の髪をよく梳(けづ)りて、油わたつけなでなどして、髻(もとどり)をとるやうにけづりよせて、ひ■■■さきの糸を一筋とりて、その鬟(みづら)のところ、上がり下がりのほど、目と眉とのあはひに当たるほど、前後ろのよりの際(きは)、兒(ちご)の顔(かほ)の広さ細さによりて結ふべし。顔広くば前に寄せ、細くば後ろに寄すべし。但しいかさまにも耳よりは前なり。
 髪のもとを五(いつ)から巻きばかり詰め結ひて、かみより下裏に、真結びに結うべし。
 まづ下結びをして、髪掻(かうがい)の先を泔坏(ゆするつき)の水に濡らして、結び目を濡らして真結びにすべし。糸を伸べじ料(れう)なり。糸を切らで髪のすそをよく解き下してのち、耳の後ろの髪を、耳の後ろ隠るゝほどに、鬢幅(びんぷく)をふくらかに清(けう)らに引きて、耳を隠すべし。
 次に髪の末を兒の肩の前によくよく撫で付けて、兒の胸に押し当てて、乳(ち)のほどにあたるほどをとらへて、また赤糸して三まとひばかりして、真結びに強く結いて、小刀して結び目の際より糸を切るべし。
 さてその結ひたる下の髪をよくよく撫でてのち、三(み)つに分けて、三つ組みにすそまで組み下して、そのすその組み果てをかみへ引き返して、元結ひたる糸の切らで置きたるして、この組み果ての元を、元結ひたるところに真結びにしてのち、際より糸を切るべし。
 いづくをも、結はんには結び目を濡らせ、糸の寛(くつろ)がぬなり。髪のすゑをば耳の上よりこして、鬢幅のうちに挟むべし。猶末出でば、首紙の内に押し入るべし。
 兒幼くて髪短くば、別に付け髪といふものを、元結たる上に結ひ付けて結ふなり。その髪などをよく結い直して、落としなどすまじきなり。
 次に挟形(はさがた)をとりて、この元を結ひたる上にあてて、兒の後ろに手をして挟形に結ぶ。その結ひ様かくべきにあらねば、左右の本を結ひて具したり。
 まづ左を結ひてのち、圓座(わらうだ)ながら引き回して右を結ふべし。我が回るも骨(こち)無(な)ければ、この料(れう)に圓座には据うれども、君の御鬟(みづら)などに参りたらんには便(びん)なし。我回るべし。泔坏(ゆするつき)の水は、糸の結目濡らさん料なり。
 次に兒を立てて、闕腋(わきあけ)の尻を掲(かか)ぐ。下襲によく重ねて乱るまじく、針に糸を付けて、上の端を所々綴ぢて背縫ひをす。そより中折(なかをり)に上へ折上(おりのぼ)せて、左の腋下より前に引きこして、後ろは兒の丈と等しきほどにて、その中程をわなに押し折りて、裾を上にて、縫目をば身の方になして、左の袂にわなを後ろへうちこして、肘の上に打ちかけたれば、尻の裾は前の方に下がりたるなり。
 次に絲鞋(しかい)を履く。襪(しとうづ)を履きてその上に履くべし。陣(ぢん)を歩むほどは、履屧(くつのしき)をぬきて履くべし。絲鞋を履きては殿上へも御所へも参るなり。
 左大臣どの常仰せらるなるは、内の御鬟(びんづら)は変るなり。別(べち)の事に非(あら)ず。御髪(ぐし)の末の耳に挟む所を、元巻(もとまき)の糸の上にくるくるとある限り巻き置きて、結ひ付けたるなりと仰せらるなるは、僻事(ひがごと)にやと思(おぼ)ゆ。いかに難(むづか)しげならん。
 幼くおはします御髪の付髪下らば、先(せん)に結ひたる方の元結の糸を切らで、御頂(いただき)より引きこして、右の元結に結ひ付けよ。

 馬に乗らせ給ふ時は、上手に尻は掻く。常の束帯の定なり。[すけゆきが手にて掻きて押したり。]


(宿直装束のこと)

 宿直装束(とのゐそうぞく)と云ふは、常の衣冠(いくわん)なり。指貫下袴常の如し。その上に闕腋(わきあけ)を着て、狩衣の帯をするなり。尻の懸様(かけよう)は束帯に同じ。着前も丈と等しく着すべし。
 宿直装束には、下鬟(さげびづら)とて結ふなり。事の次第は同じことなり。結う様又同じことなり。元結ひたる糸を真結びに結びて、際(きは)より剪りて中を結はず。裾を組までよくよく肩の前に髪の裾撫で下げて、紫村濃(むらさきむらご)の糸の、三作に紙縒(こおより)のほどに寄りたる、九尺ばかりあるして、元結の紫の糸の上を、諸鉤(もろかぎ)に結ふなり。その鉤は、長さは兒の乳(ち)のほどまでさがるべし。裾は膝にあたる程まであるべし。糸短くばそれより短くてあるべし。髪の末も、この糸の裾も、羂(わな)も、裏表(うらうへ)ながら肩の前より下がるべし。これも園座(わらうだ)に据えて、まづ左を結ひて廻して結ふべし。この太き糸を足津緒(あしづを)と云ふなり。斯く足津緒して結ひたる上に、うるはしき鬟(※前出の上鬟)の様に挟形を結ふ事あり。宿直装束のと思ひて、引き繕う折の事なり。


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満佐須計装束抄(抄出)
(巻二)


わらハ殿上のこと
闕腋のさうぞくものゝぐつねのごとし。うへのきぬあかいろなり。つねの五ゐのうえのきぬのあかみたるやうなり。もんにあふひつねのことなり。したがさねつねのつゝじ、おもてあや、うらひとへ、もんやうしてうちたり。中倍あり。はんぴハくろはんぴ、襴緒などハ羅といふものなり。なつハうすもの、常のあこめのいろこゝにあるべし。ただしこきさうぞくならバ、すはうのあこめあをきひとへにて、こきうちぎぬきるべし。うへのはかまおりもの、上達部のさうぞくのていなり。これハこきさうぞく、うらハこし。大口も濃かるべし。とりかさねて圓座のうへにをきてとりいだすべし。きるべきしだいにをくべし。
 帯、角の丸鞆、五ゐの笏、引帯、襪、絲鞋、扇を具すべし。淡繪あり。
 なつのしたがさねあかいろ、くろはんぴなり。いろをゆりたるゆへなり。
 うへのはかまのうら、大口あかくともくるしかるまじけれども、おさなけれバうちまかせてハこきさうぞくなり。
 さうぞくすることはつねのわきあけなり。たゞしはんぴの緒ゆふべし。本を見るべし。さうぞくしてのち、わらうだにこのちごをすへて、びんづらをゆふべし。

 揆上の筥のふたに、挟形二筋、■ながさ一尺余ばかり、細さ五分ばかりに、羅をたゝみて、いろ々のいとにて、鬘手に蝶小鳥を繍ひたり。いろはんぴのらんのき(れ)か■■むらさきのいとのふとらかにおしよりたるが、■ながさ二三尺ばかりなる三すぢ四すぢ、櫛二枚がうち、解櫛一枚、平髪掻一つ、油壺に油綿いれて、■小刀ひとつ、これらをかゝけのはこのふたにいれて、さうぞくにぐしてとりいだすなり。ゆするつきに水いれて、柳筥にをきてぐすべし。紙捻ふたすぢ。

みづらをゆふこと
 まづ解櫛にて、ちごのかみをときまはして、平髪掻にて、分目の筋より項をわけくだして、まづ右のかみをかみ(ひ)ねりしてゆひて、左のかみをよくけづりて、あぶらわたつけなでなどして、もとどりをとるやうにけづりよせて、ひ■■■さきのいとをひとすぢとりて、そのみづらのところ、あがりさがりのほど、めとまゆとのあはひにあたるほど、まへうしろのよりのきは、兒のかほのひろさほそさによりてゆふべし。かほひろくバまへによせ、ほそくバうしろによすべし。たゞしいかさまにもみゝよりハまへなり。
 かみのもとを五から巻きバかりつめゆひて、かみよりしたうらに、まむすびにゆふべし。
 まつ下結びをして、かうがいのさきをゆするつきの水にぬらして、むすびめをぬらしてまむすびにすべし。いとをのべじれうなり。糸をきらでかみのすすをよくときくだしてのち、みゝのうしろのかみを、みゝのうしろかくるゝほどに、鬢幅をふくらかに清らに引きて、みゝをかくすべし。
 つぎにかみのすゑをちごのかたのまへによく々なでつけて、ちごのむねにをしあてて、乳のほどにあたるほどをとらへて、またあかいとして三まとひバかりして、まむすびにつよくゆひて、こがたなしてむすびめのきはよりいとをきるべし。さてそのゆひたるしものかみをよく々なでてのち、三つにわけて、みつぐみにすそまでくみくだして、そのすそのくみはてをかみへひきかへして、もとゆひたるいとのきらでをきたるして、このくみはてのもとを、もとゆひたるところにまむすびにしてのち、きはよりいとをきるべし。いづくをも、ゆはんにハむすびめをぬらせ、いとのくつろがぬなり。かみのすゑをバみゝのおへよりこして、びんぷくのうちにはさむべし。なをすゑいでバ、くびかみのうちにおしいるべし。ちごをさなくてかみみじかくバ、べちにつけがみといふものを、もとゆひたるうへにゆひつけてゆふなり。そのかみなどをよくゆひなどして、おとしなどすまじきなり。
 つぎに挟形をとりて、このもとをゆひたるうへにあてて、ちごのうしろにてをしてはさがたにむすぶ。そのゆひやうかくべきにあらねバ、ひだり右の本をゆひてぐしたり。
 まづひだりをゆひてのち、圓座ながらひきまはして右をゆふべし。わがまハるもこちなけれバ、このれうにわらうだにハすうれども、きみの御みつらなどにまいりたらんにハびんなし。われまハるべし。
 泔坏の水ハ、いとのむすびめぬらさんれうなり。つぎにちごをたてて、わきあけのしりをかゝぐ。したがさねによくかさねてみだるまじく、針にいとをつけて、うへのはしをところ々とぢてせぬひをす。そより中折にかみへをりのぼせて、ひだりのわきのしたよりまへにひきこして、うしろはちごのたけとひとしきほどにて、そのなかほどをわなにをしをりて、すそをうへにて、ぬひめをバ身のかたになして、ひだりのたもとにわなをうしろへうちこして、ひぢのかみにうちかけたれバ、しりのすそハまへのかたにさがりたるなり。つぎにしかゐをはく。したうづをはきてそのうへにはくべし。陣をあゆむほどハ、履屧をぬきてはくべし。しかゐハはきてハ殿上へも御所へもまいるなり。
 左大臣どのつねおほせらるなるハ、うちの御びんづらハかはるなり。べちのことにあらず。御ぐしのすゑのみゝにはさむ所を、元巻のいとのうへにくるくるとあるかぎりまきをきて、ゆひつけたるなりとおほせらるなるハ、ひがごとにやとおぼゆ。いかにむづかしげならん。をさなくおはします御gしのつけがみさがらバ、先にゆひがるかたのもとゆひのいとをきらで、御いたゞきよりひきこして、右のもとゆひにゆひつけよ。
 馬に乗らせ給ときは、うはてにしりハかく。つねのそくたいの定なり。[すけゆきがてにてかきておしたり。]
 とのゐそうぞくといふハ。つねの衣冠なり。さしぬきしたのはかまつねのごとし。そのうへにわきあけをきて、かりぎぬのをびをするなり。しりのかけようハそくたいにおなじ。きまへもたけとひとしくきすべし。
 とのゐそうぞくにハ、さけびづらとてゆふなり。ことのしだいハおなじことなり。ゆふやう又おなじことなり。もとゆひたるいとをまむすびにむすびて、きハよりきりてなかをゆはず。すそをくまでよく々肩のまへにかみのすそなでさげて、紫村濃のいとの、みつくりにこおよりのほどによりたる、九尺ばかりあるして、もとゆひのむらさきの糸のうへを、もろかぎにゆふなり。そのかぎハ、ながさハちごの乳のほどまでさがるべし。すそハひざにあたるほどまであるべし。いとみじかくバそれよりみじかくてあるべし。かみのすゑも、このいとのすそも、わなも、うらうへながらかたのまへよりさがるべし。これもわらうだにすへて、まづひだりをゆひてまハしてゆふべし。このふときいとをあしづをといふなり。かくあしづをしてゆひたるうへに、うるはしきびづらのやうにはさがたをゆふことあり。とのゐそうぞくのとおもひて、ひきつくらうおりの事なり。

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底本:「新校群書類従 第五巻装束部(一)」(内外株式會社)所収『満佐須計装束抄』
http://dl.ndl.go.jp/info:ndljp/pid/1879736/315 (NDL)
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Twitterのほうで2024年大河ドラマの話題で女性名の話になっていたので、女官通解と官職要解を参照してみてたのですが、女官通解の方はどうも現在絶版らしいので、女房の呼称についての部分をメモとして抜き書きしておきます。重複する部分もありますが、官職要解の記述のほうが分かり易いのでついでに。

講談社学術文庫「新訂 女官通解」より【女房の名のこと】

『女房に名づくること、種々の差別あり。候名(さぶらいな)あり、国名(くにな)あり、殿名(とのな)あり、小路名あり、召名(めしな)あり、おさな名あり、かた名あり、たいの名あり。今、その大要をあぐれば左のごとし。

■候名は、また侍名とも称し、ひさしき、うれしき、ゆりはな、久、亀、鶴などいえるは、その一例なり。

■国名は、既に、記したるごとく、伊予、播磨、讃岐、美濃、肥前、伊賀、越前、相模、尾張、武蔵、甲斐、備中、下野、丹後、三河、土佐、伯耆、備後、筑前などいうがごとし。

■殿名は、京極殿、堀川殿、坊門殿、大宮殿、春日殿、冷泉殿、近衞殿、一条殿、二条殿、三条殿、高倉殿などいうがごとし。

■小路名は、右殿名に同じ。一条、二条、三条、古のへ、春日は小路名のうちにても上の名なり。大宮、京極は中の名なり。高倉、四条は小路名の中にても下の名なり。

■召名は、按察(あぜち)、大進(だいしん)、少進(しょうしん)、大弐(だいに)、少弐(しょうに)、少弁(こべん)、左衛門(さえもん)、少将(しょうしょう)、左京大夫(さきょうのだいぶ)、右京大夫(うきょうのだいぶ)、民部卿(みんぶきょう)、中納言(ちゅうなごん)、帥(そち)、別当(べっとう)、宰相(さいしょう)、兵衛(ひょうえ)、刑部卿(ぎょうぶのきょう)、治部卿(じぶきょう)、大蔵卿(おおくらきょう)、宮内卿(くないきょう)、兵部卿(ひょうぶきょう)、侍従(じじゅう)のごとき官名の類これなり。

■おさな名は、ちゃちゃ、あちゃ、かか、とと、あこ、あか、あと、ここ、ちゃら、つま、あやの類これなり。

■かた名は、東御方(ひがしのおんかた)、南御方、西御方の類これなり。中にも北、東の御方は上なり。南、西は方角にて劣りたるなり。

■むき名は、かた名に同じ。かた名とむき名とは、かたなの方上りたりといえり。

■たいの名は、一の対は上なり。御妻、二の対などはいささか劣れり。

 以上のうち、おさな名は、上臈、小上臈これをつく。中臈もつくることあり。殿名は、上、中臈これをつく。下臈はつけず。小路名また同じ。たいていは、上小上臈のつけ名なり。候名は、上臈、中量、下臈みなつく。召名は、上、中臈を主とし、下臈はつけず。但し侍従、少弁、少納言は、下臈なれども中臈をかけたるによりてつくるなり。

 召名の中にても、大納言、按察、民部卿、中納言、左衛門督(さえもんのかみ)、帥、別当、宰相、兵衛督、刑部卿、大蔵卿、宮内卿、兵部卿は小上臈の召名なり。督殿(こうどの)、大弐、中将、弁少将(べんのしょうしょう)、左京大夫、右京大夫、権大夫(ごんのだいぶ)、左衛門佐(うえもんのすけ)、右衛門佐、侍従、少納言、兵衛佐、大進、大輔、少輔、佐は中臈の召名なり。中臈にても公達、蔵人、五位のほかはつけずといえり。

 国名は、下臈これをつく。中にも、伊予、播磨、丹後、周防、越前、伊勢は中臈をかけたることあり。対名、向名はみな上臈のつくるところなり。また御所の号あり。北の政所などいうがごとし。対名、向名よりも上にして、粗末につくることなしという。』(引用了)

講談社学術文庫「官職要解」より

『宮仕えの女房は、前にいったごとく、品位(ほんい)の上等なものばかりで、昔はそのなかを上中下の三等にわけて階級を定めた。(…)

■上臈(じょうろう)《女房官品》という書物には、上臈の局(つぼね)とあって、御匣殿(みくしげどの)、尚侍(ないしのかみ)、および二位、三位の典侍(ないしのすけ)で禁色(きんじき、赤または青色の装束)をゆるされた大臣の女(むすめ)あるいは孫女(まごむすめ)などをいう。たとい三位以上の婦人でも禁色をゆるされないものは、上臈と称することはできない。(…)

 また、小上臈(こじょうろう)というものがあって、公卿の女を称した。織物の唐衣(からぎぬ)、織物の表着(うわぎ)をきることのできるものばかりである。もっとも、場合によっては、公卿の孫女や公卿でないものの女をも小上臈といったことがある。

■中臈(ちゅうろう) 内侍の外の女官、および侍臣の女や、医道の和気氏、丹波氏、陰陽師の賀茂、安倍両氏などの女をいった。命婦(みょうぶ)もまた中臈である。

■下臈(げろう) 摂政関白の家の家司の女や、賀茂、日吉の社司の女などである。女蔵人(にょくろうど)もまた下臈である。

 禁中で女房といったのは、この上中下臈と小上臈であるが、仙洞(上皇の御所)および執柄家には、大上臈というものもあった。なお、女房のことは、《禁秘御抄》《女房官品》《女官志》《光台一覧》などにくわしく見えてあるから、本書について知るがよろしい。
 この女房たちの名前であるが、大方本名をいわないで、呼名といって男の官名や国名・候名などをつけていた。物語文などにあって大よそ定まっているから、kれをもついでに述べておきましょう。

■官名を呼名につけることは、まず上臈には、大納言局、中納言局、左衛門督、帥、一位局、二位局、三位局(さんみのつぼね)などとつけ、少々ひくいところには、按察使とつける例である。また、小宰相、小督、小兵衛督は、中臈、小上臈につけ、中将、少将、左京大夫、宮内卿、新介(しんすけ)、左衛門督、および侍従、少納言、少弁などは、中臈につける例である。そのなかにも、小の字をつけたのは少しよいほうである。

■国名は、中臈、下臈につける例である。そのなかでも、伊予、播磨、丹後、周防、越前、伊勢は少し上等であるから、中臈につけたのである。

■候名は、国名でもなく官名でもない名称を用いたのである。《今鏡》宇治の河瀬の巻に「うれしき」「いはいを」と見え、《増鏡》村時雨の巻に「女蔵人高砂」、《千載和歌集》に「皇后宮若水」、《続後撰和歌集》に「高陽院木綿四手(ゆうしで)」とある類である。

 仙洞、および執柄家の女房には、このほか、かた名、むき名、小路名というものがあった。かた名、むき名は、方角をつけたもので、東の御方、西の御方という類である。そのなかでも、かた名のほうが上等で、むき名のほうが下等である。これは、曹司して住んでいる方角によったもので、また一の対、二の対など、殿舎の称によってつけたのもある。

■小路名とは、京都の町名をつけたものである。《禁秘御抄》上臈の条に「禁中に小路名なし。仍て最上と雖も大納言と号す」とあって、執柄家上臈の女房につけたのである。もっとも、そのなかでも、一条、二条、三条、近衛、春日は上等、大宮、京極は中等、高倉、四条は下等である。

■このほか、宣旨(せんじ)という名をつけたのもあった。これは、立后の時、その宣旨をとり伝えたものであるから、中宮の宣旨といい、また宮の宣旨ともいう。(…)

 また、女房の名前の下には、キミ、御(ご)、オモトとつけていったことがある、これは、男の何卿、何ぬしといっているように、敬称をもちいたのである。《紫式部日記》に「民部のおもと」といい、《大和物語》に「少将の御、伊予の御」とかいてある類である。』(引用了)
めずらしい女性ネタ そしてめずらしいTVネタ
朝ドラ「マッサン」のエリーのアップヘアどうなってるか観察してみました
 
三つ編みを頭に巻き付ける髪型はたまに見かけますが
エリーの髪型は単なる巻き付けでも編み込みでもないのでちょっと不思議に思いまして。

たぶん短かくて一本や2本では頭全体に回せなかったんだと思います。
自分でやるとしたら、ピンは必須で
三つ編みを上げる方向を意識してねじったり持ち上げながら編むとか
整髪料つけながら出来るだけ毛先の方まで編んであとで隠しやすくするとかかなあ。
もちろんドラマの現場ではヘアメイクさんが綺麗に整えてらっしゃるのでしょうけど。
マッサン公式の方でメイキングやってくださるようなNHK方面のtweetもお見掛けしたので
たのしみです。観察結果まちがってたらすんません。

あとエリーに似ている、この人を連想すると名前が挙がってた、
ウクライナの政治家ユーリヤ・ティモシェンコ(髪型変えたらしいですが)、
ナウシカのクシャナ、
Fateのセイバー(敬称略)
です


ティモシェンコさんちょっと若すぎたかも知れませんが、この並びなのでそうしたんだと御理解下さい
お三方ともエリーとはちょっと違いますね。
結構色んなところで見かける気はするのですが、清楚でいいですよね…。

三つ編みを頭に巻き付ける、巻き付けるように編み込んでいく髪型は
 
Crown Braid、Braid(ed) crown、Heidi braidなどと呼ばれるようです。

画像検索だと、ブレイドクラウンの方が編み込みが多いように見えますがどうなんでしょ。
HowtoもたくさんUPされてますので探してみては。

描き足りなかったので画像検索結果からチョイスしてスケッチ。


wikiだと Crown braid あるいは Crown plait、 『ウクライナの伝統的な髪型』と説明してあるようですが…
 http://en.wikipedia.org/wiki/List_of_hairstyles

ちなみに三つ編みでシニヨンを作る髪型は Bun だそうです。
http://en.wikipedia.org/wiki/Bun_(hairstyle)


また、日本での洋髪としてのこの髪型の名称は、
『イギリス結び』『マーガレット』など、混乱があるようです。

参考:【「英吉利むすび」とはどんな髪形か... | レファ協同DB】 

レファ協でも参考に上げられている洋髪本だと、
http://kindai.ndl.go.jp/info:ndljp/pid/902392/7
画像荒くて見づらいですが、イギリス巻きは髷に三つ編みを巻き付けたもの(上図のセイバーさんのような)、
マーガレットは三つ編みを下げて末を持ち上げて輪にしたものと説明されているようです。

 混乱のもとは三つ編みのアレンジというざっくりしたまとめ方なのかも知れませんが。
明治時代まで日本には三つ編みを髪型に利用する(少なくとも見えるところには)ことってなかったように思いますし、
そういう大雑把な括りで間に合ってたんだろうか…。あ、縄文頃ならあったかもしれませんが。
今だと三つ編みカチューシャとか編み込みアップとかなのかなあ。


それから
三つ編みを巻く髪型なら、こちらもですね。朝鮮王朝時代の女性の結髪。(チャングムとハン尚宮さまで)
参考:【『李朝鮮王朝』時代の女性の髪型 ~「가체カッチェ」が廃止されるまで~】  

調べものをしていて拾いものをするのはままあることですが

今日はこういうネタをみつけました。


角刈りのルーツについての記述です。

「男女美容編 : 実用問答」という明治終わり頃の本からです。

これによると明治二十二年ある床屋さんを訪れた青年紳士が、フランスの髪型『ポンペドー』をその床屋の主に教えたのが始まりとか。


以下、抄出原文ママ。


『問:當時勞働社會に流行して居る角刈は、元は紳士達が盛んに刈ったものと聞いて居升がほんとうですか、

答:其れには篠床主人から聞いた話を其の儘答と致さう、左樣です。あれは確か明治二十二年の春でしたらう私しへ一人の青年紳士が飄然として遣つて來た、私は何心なく出てゝ其客を迎へた、其紳士は私に向つて此頃佛蘭西に行はれてゐるポンペドーといふ刈方を知つて居るかとのことですが、恥しいことではあるが私はポンペドーのポの字も知らないから、其の旨有のまゝに答へたら、青年紳士は左樣か、それではまだ日本へ行はれて居らぬと見へる、どふだ一つ流行らして見てはと、一々その格好や、鬢を逆さに立てゝ刈る具合を教へて呉れたから、其言葉通り遣って見ると、大層格好がよく出来たので、紳士も教へ甲斐あると云ふて喜んで歸へつたが、それが段々今日の流行を來たした基です。

一體此の角刈は、元は佛蘭西の軍人が始めたもので、彼方では軍人を貴む處からして殊に若い人たちは我も\/と眞似した一時は非常な流行であつたさうです、併し佛蘭西人の毛は、我々日本人に比ぶると、毛が柔らかいので帽子を冠(か)ふると毛が皆寐(ね)て、折角の角刈も臺なしになつて仕舞うから小さなブラシをポケツトに入れ置き人の處へ行くと玄關でブラシを頭にかけて倒(さかさ)まになで上げたとのことです、それが前に申した樣の次第で、日本に流行つて來たが、日本人の毛は御承知の通り硬いから、佛蘭西人の樣な手數もなし、それに新を好は人情の常おまけに上手に刈るとなか\/粋な頭髪でしたから、青年紳士は争ふて間似ねましたが、何時の時にか勞働社會の専有物となつて、上流には余り見受けない樣になつた、流行と云ふものは妙なもので、今日では角刈にして居ないと、労働者が若い者仲間に幅が利かないと云ふ樣な勢になつたのです、尤も以前上流社會に流行つたのは、眞角でなく少々角は丸めたものでした。』

「男女美容編 : 実用問答」衛生新報社編輯局 編/丸山舎書籍部 明治四十年 

原文: http://dl.ndl.go.jp/info:ndljp/pid/848954/126



『ポンペドー』って、『ポンパドゥール』のことですよね多分。ポンパドゥール婦人の肖像画をご想像いただくとわかりやすいと思いますが、近年日本でも(主に女性が)前髪を立てる髪型のことをそう呼ぶようです。個人的にはあん…まり好きではないけど…。角刈りのルーツなんだ。



角刈り - Google 検索


Pompadour hairstyle - Google 検索


Pompadour (hairstyle) - Wikipedia, the free encyclopedia
おお、ポンパドゥールは、日本ではリーゼントと呼ばれ、娯楽作品ではしばしばヤクザや暴走族やヤンキーに典型的な髪型として描かれる、と紹介されている。


『In modern Japanese popular culture, the pompadour is a stereotypical hairstyle often worn by gang members, thugs, members of the yakuza and its junior counterpart bōsōzoku, and other similar groups such as the yankii(high-school hoodlums). In Japan the style is known as the "Regent" hairstyle, and is oftencaricatured in various forms of entertainment media such as anime, manga, television, and music videos.』


リーゼント - Wikipedia 

(リーゼントの特徴は)日本ではしばしば前髪を高くしたポンパドールを指すものと誤解されている。これは米国では略してポンプ (POMP)とも呼ばれ、英国ではクイッフ(英:quiff)と呼ばれる。』

ポンパドール=リーゼント(和製英語)かあ。

たぶん、明治の角刈りはソフトなリーゼントみたいな感じだったんだろうけど、そこから角刈りの形になってった経緯は、髪質の違い?だったのかな?


なお、プレスリーの髪型は『Pompadour & Ducktail』ともいうみたい。前髪を立てるのがポンパドゥール、後頭部がダックテール

Pompadour Ducktail - Google 検索 https://www.google.co.jp/search?espv=210&es_sm=122&tbm=isch&source=univ&sa=X&ei=Lig5U-u_IISukgXZvICQAg&ved=0CDAQsAQ&biw=1746&bih=903&q=Pompadour+Ducktail


今度から角刈りの人を見たら心のなかで『ポンペドーさんだ…』と思うことにしよう。


蛇足
うーん、『リーゼント』の名称がリージェンシー・ストリートからって、偶々なんだろだけど、あの放蕩者の摂政王太子(Prince regent 英国では大体ジョージ4世を指す)の髪型、みたいなことになっちゃってて面白い。
 海外ものヒストリカルロマンスでは、英国摂政時代を舞台とした『リージェンシー』が一ジャンルを確立しています。そもそも、日本の時代劇が江戸ばっかりだなって思う程度には中~近世英国ものが多いのですが、その中でも人気のある時代のようで。
 個人的には、サブリナ・ジェフリーズ作で摂政王太子ご本人もご出演になる『背徳の貴公子』三部作(MIRA文庫)、登場人物が共通してる『修養学校シリーズ』(扶桑社ロマンス)がおすすめ。風俗描写もばっちりだし、政治社会情勢をストーリーに落とし込むのがすごく巧みな方です。修養学校シリーズは巻数も出ていたし、他の作家さんも参加したオムニバス短編集も出てて、海外でも人気があったんだろうな~。
本ブログに掲載している、調べ物や資料まとめの目次です。
メモ代わりの短めのテキストが主です。

 東大寺大仏開眼導師となった、インド生まれの僧・菩提僊那について。
 後白河院が落飾した際の儀式次第など
 大江正房『傀儡子記』読み下し+訳注

 日本書紀の小竹祝・天野祝の挿話 原文+訳
 日本古代~中世の米の種類・調理法についてのメモ
 七草粥や節供の由来について。
 北院御室(第六世仁和寺門跡・守覚法親王)の手記序文 読み下しのみ。
 日本の在来牛+乳製品+牛車の種類
 受領国司の任用について 功過定や巡任など
 御所言葉(公家詞)について
 紹介記事の転載なのであまり内容はないです


養老令から、衣服令(表)
 養老令の衣服令部分を表にしています。

法衣・袈裟 構成比較 附、袈裟図解
 法体装束抄などから拾った構成表です

稚児観音縁起絵巻詞書 原文+訳注
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「雅亮装束抄」より、童殿上のこと、みづらを結ふこと

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(美豆良/鬟/鬢頬/総角)。

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